「赤谷の森」の自然散策

赤谷森林環境保全ふれあいセンターの小川さんからご案内をいただいたので、久しぶりに赤谷の美林を堪能してきた。講師は草津森林療法協議会「森の癒しトレーナー育成講座」でお世話になった長島成和さん。

今日は「小出俣エリア」を進む。歩き始めてすぐに、特徴のある大きな岩の下をくぐる。鈴木さんの話では、この林道を作る際にダイナマイトを爆破させてこのような形になったのだと。

そして石の上にイタチ科動物の糞が。すると青木さんが早速採取。AKAYAプロジェクトではテンの糞モニタリング調査を行っているのだ。しかし青木さんいわく、どうもイタチのようだとのこと。テンの肛門サイズと合わないらしい。見ただけでわかるとは恐れ入った。


  


このコースの初めのうちにあったブナは、イヌブナ(ブナ科ブナ属)の方だった。イヌブナの方がブナに比べると樹皮が少し黒っぽく見え、いぼ状の皮目がある。側脈は10〜14対というが私が今日見たものは15対だったのだから図鑑なんて当てにならない。

葉の裏の脈上には長い軟毛が見える。これもブナにはない特徴の一つ。

トチノキの冬芽の粘りは凄い。今日はじめて舐めてみたが、やっぱりトチの実のような凄い渋味があった。このいつまでも口の中に残る感じはプロポリスに似ている。そう、確かにプロポリスもアフリカ蜂化セイヨウミツバチが集める木の芽などの植物の滲出物である。じゃあ、トチノキ冬芽も人体にはいいのかも知れないぞ?


  


アオハダは、同僚の津島氏が葉の色をとても気に入り、庭に植えた樹。なるほど、確かにそんな気がする。併せて撮ったはずの樹皮だが、なんか雰囲気が違うような…?

東電の発電貯水池は、完全に埋まっている。写真等ではこういう光景を見たことがあるが実際に見るのは初めて。昭和36年(だったかな?)頃の竣工のようだが、このように土砂で池が埋まるのに44年間かかった訳ではあるまい。どのくらいの貯水量の池で何年かかってこうなったのか、聞いてみたいなあ。


  


今回は樹木の話をいろいろ聞けて助かる。

メグスリノキ(カエデ科カエデ属)はミツデカエデとよく似ている。メグスリノキはこのように三出複葉の基部裏面が毛深い。それと、今日見たミツデカエデは五出になっているものがあったぞ!?

ウリカエデ(カエデ科カエデ属)っていうのがあった。確かにウリハダカエデよりも葉は小さく、裂が浅い。樹皮も少し違って見える。


  


50年生程のカラマツ植林地では、興味的な話しを聞けた。この森を生物多様な森にするため、本来の森の姿に近いものにするために、帯状に間伐することが決まっている。そしてその幅を20m・30m・40mに変えて施行し、それぞれの遷移の変化を調査するというのである。AKAYAプロジェクトならではだなあと思う。そういう、だいたいなんとなーく解かっているような事をきっちりと(泥臭く)調査しようというのがAKAYAプロジェクト。

さてこのハクウンボクエゴノキエゴノキ属)は驚き。落葉広葉樹なのに冬芽が見えない…と思ったら、葉を採ると中から冬芽が出てきた!進化の仕方ってさまざまだなあ。


  


そうして、このコースの主とでもいうべき大木、カツラ(カツラ科カツラ属)の樹が姿を現す。

カツラの葉は、そういえば落葉の頃匂いがするのだった。揉んでみて思い出した。小崎さんは、この砂糖醤油のような香りが好きなのだと話してくれた。竹之内さんは、東京のひよこというお菓子の匂いがすると話してくれた。ひよこって何?

この大木の下で、お弁当を食べた。いい場所だ。


  


いやーしかしなんちゅう迫力のあるカツラだ。こんな大木、なかなか見られるものではない。しかし一本一本の直径は1mもないのだろうか?でもそれが何本も株立ちになっている。中心部はくっついてしまっているものもある。

ナチュラリスト達がここで環境教育を実施したくなる気持ちがよく解かる。ぜひ、この樹の下では感性を揺さぶるプログラムを行ってほしい。ここまで育つまでの自然の試練と競争の話、物質とエネルギーの循環の話、炭素蓄積や立体構造の話、瞑想や樹林気功してみても良いだろう。


  


左…ジュウモンジシダ(オシダ科)  右…リョウメンシダ(オシダ科)共に、林業的にスギを植える際の指標植物。肥沃な土壌で湿度があり、適度に礫を含んでいる場所であるという。

他にはコナラも、何とか育つという意味ではあるが指標植物になるとのこと。

マルバマンサク(マンサク科マンサク属)は、日本海側のマンサク。ここでの和名の由来が爆笑。『…「マンサク」とは、春一番に「まず咲く」花である本種を、東北の人が訛って「まんず咲く」と言っていた。しかし図鑑に「まんず咲く」と書くのはいささか問題があるので、“ず”をとって「マンサク」としたのです。…by牧野富太郎

東北の人が参加していたらぶっ飛ばされるなあ。


  


樹と樹の間隔が充分にあり、林床が笹で覆われていない、ブナを主体とした落葉広葉樹林。こんな場所でのインタープリテーションには一種の憧れを持っている。しかし私のバックボーンではまだこの林分を深い意味で理解しておらず、まだ無理だろうな。

すぐ近くにあった二股のホオノキには、たくさんの熊の足跡があった。長島さんはホオノキの実は食べないので、きっと練習で登ったのだろうと仰った。ホオノキの樹皮は平滑なので、若い熊がブナと間違えて登った可能性は?またどうだろう、雑食性の熊のこと、何を食うか解かったものじゃない。新芽の可能性は?冬眠あけの解毒作用としての花の食餌は?


  


ブナの下には、きっと昨年の豊作の影響と見られる実生がたくさんあった。一年目はこんなもん。

クロモジを紹介されたので、せっかくの昼食後、爪楊枝にして使わせてもらった。

フサザクラ(フサザクラ科フサザクラ属)の葉の形は変わっている。草本のカメバヒキオコシに似ているような…。


  


そして、湯田さんが見つけたこの群生。シモフリシメジ(キシメジ科キシメジ属)。食用になりおいしいきのこ。比較的もろい傘も、柄の肉質も、ゆでると弾力が出て歯切れがよくうま味のあるよいだしが出る…と図鑑にあるので、よっしゃ、早速食べてみるか。

※翌日お味噌汁にしていただきました。キシメジ属のきのこは独特な芝臭みがある。歯ごたえは悪くないのだが、油と絡めたほうが美味しかったのではないか?と思った。