FIELD GUIDE SERIE 7 雪と氷の自然観察


  雪と氷の自然観察


  編集 日本自然保護協会
  出版 平凡社(2001/12)
  単行本340P
  サイズ19x13
  ¥2,100


中身の濃い一冊。雪上観察の魅力から入り、雪景色の観察、降雪のしくみ、雪氷の性質と観察方法、冬の植物・動物の雪国ならではの生存戦略、かつて雪国で普通に見られた雪遊びや雪と人とのつながり、雪上自然観察と自然保護、雪上観察とは何ぞや…など取り扱っているテーマは数多く、この一冊をマスターすればまず、雪上自然観察案内・指導には困らないだろう。



しかし筆者が多数であることと、項目も“観察について”という独特な分類・順番なので、読みにくい本でもある。後日の引用の際にどこに何が書いてあったか分からなくなってしまうので、タックシールと色字で下線を引くなどして工夫して使ってほしい。書いてあることはNACS-Jが長年にわたりコツコツと観察・観測・調査してきた蓄積の賜物そのものであり、強い説得力はその重厚な背骨からくるものである。



また、スキー場開発に関しては極端な懸念と警告メッセージを発し、スノーシュークロスカントリースキーによる自然観察を推奨していたり、【人と雪のつながり】の章では中世の古い文献を引用するなどして雪国のエピソードを結構なボリュームで紹介している。この辺も「現場の知識と実行力で自然を守る」とうたうNACS-Jらしい特徴だ。とどめは金田平さんのこの句切り。

『雪という地域の特性を、いまこそ見直すときにきたのではないだろうか。スキー場開発とその後の潤いに置き忘れてきた人々の暮らしの「記憶」を、掘り起こし、訪れる人々に伝えることから、新しい「雪とともに歩む活力」が沸いてはこないだろうか。先人の知恵や工夫に学ぶことは多いはずだ。雪国のよさに気づき、その素晴らしさを表現するためには、地域をみんなでじっくり見て、探してみることが必要だ。スキーの持つ本来の「歩く道具」としての機能を利用して、「雪の野山を楽しむ」ことを目的とした活動に、そうした雪国の人々の知恵や楽しみや苦労を映し出し、土地の人みずからがその活動の担い手となって、訪問者とじかに触れ合うことで、状況は変わるかもしれない。』