新・生物多様性国家戦略 −自然の保全と再生のための基本計画−


新・生物多様性国家戦略―自然の保全と再生のための基本計画

  • 編集 環境省
  • 発行 ぎょうせい(2002/09)
  • 大型本315P
  • ¥1,800


1992年の国連環境開発会議(地球サミット)開催にあわせ「気候変動枠組条約」と共に採択された「生物多様性条約」。本条約第6条により、各国政府は生物多様性保全と持続可能な利用を目的とした国家戦略を策定するのが求められている。1997年に策定し、5年後程度に見直しを行う事とした。改定第1版である。



地球上には3,000万種またはそれ以上の生物種が存在すると言われており、このうち既知の総種数は約180万種(日本は9万種以上)で、このうち哺乳類約6,000種、鳥類約9,000種、昆虫約95万種、維管束植物27万種となっている。そういった世界の植物区系や動物地理区、日本の生物種における現状を分析した後、そこから課題、理念、目標、グランドデザイン、方針、具体的施策、実施…という戦略を記述している。



国家戦略の中に大切な言葉をたくさん見つけた。「P165.…1982年にIWCにおいて採択された商業捕鯨一時停止(モラトリアム)決定が見直されるよう科学的情報の収集に積極的に取り組んでいます。」「P202.かつての伝統的な農村社会では、日常生活そのものが自然とのふれあいであり、日本人は、人間も自然(生態系)の一部であるとの認識を自然に有していました。」「P224.私たち人間は、自然の圧倒的な力の前では小さな存在であり、自然に対して慎み深い気持ちを育てることも大切です。また、環境教育・環境学習においては、人間と自然のかかわりについての文化・歴史・社会システムとその地域性について伝える事も重要です。」「P245.10年後(2011年)には、約180万種ある学名を持つ全生物の9割以上をカバーし、インターネットで閲覧できるシステムを作り上げる予定です。」「P293.生態系は時と共に流動し、種の自然の分布は、人間の手が加わる事がない場合であっても多様であるという事実を十分考慮しなくてはならない。」「298.条例本文…生物の多様性の著しい減少又は喪失のおそれがある場合には、科学的な確実性が十分にないことをもって、そのようなおそれを回避し又は最小にするための措置をとることを延期する理由とすべきではない」



国家公務員も人間であり、交流していくとどの発言が国の考え方なのか良く解らなくなることもある。そういう際に原点に立ち戻るためにも必要な一冊。また、国がこのような計画を策定しているのには驚きである。この戦略を現実にしていくための有効な人材でありたいと思う。