森林インストラクター 森の動物・昆虫学のすすめ〔改訂版〕


森林インストラクター―森の動物・昆虫学のすすめ


 著者 西口親雄
 発行 八坂書房(2004/02)
 ¥2,100



これからの森林インストラクターは、植物や動物の名前を教えるだけで終わってはいけない。森の動物たちや小さな虫たちの森林生態系における存在意義と役割の話も交えてやり、一般の人達に森の魅力を最大限に引き出した伝え方をしてほしいと著者は述べる。



設定したテーマや項目に対しての問題点や回答が箇条書きになっており、このまま学校の教材としても使えるし、丸暗記してしまう事も可能だろう。挿し絵のスケッチも上手で、あとがきではスケッチを推奨する文が載っていた。



例によって本書より感慨深い一部を抜粋。



「…広葉樹は、穿孔虫の進入を受けると、カルスを形成して傷を治癒していく。その部分の組織はひどく肥大するが、木は枯れることはない。一方、虫のほうはどうか。針葉樹であれば虫はほとんど死んでしまうが、広葉樹の場合は虫が死ぬことは少ない。もしかしたら、広葉樹の対虫戦略は虫を殺すことではなく、虫に耐え、虫と共存していくことかもしれない。

 虫を樹脂で封殺してしまう針葉樹に対しては、虫も毒性の微生物を伴なって木をアタックしてくる。その結果、殺し合いの戦争となる。ところが不思議なことに、虫を殺すというやり方をやめた広葉樹に対しては虫側も木を殺すのをやめ、共存策をとる方向に動いている。

 広葉樹の方が、進化した生き物なのである。」