森との共生 〜持続可能な社会のために〜


 森との共生―持続可能な社会のために

 著者 藤森隆郎
 発行 丸善 (2000/06)
 ¥819



藤森隆郎氏は森林総合研究所の元森林環境部長で、京都大学農学博士、農林水産大臣賞受賞、国連傘下の持続可能な森林管理の基準・指標作成委員会の日本代表・・・と、輝かしい実績を上げればキリが無い人物。森林インストラクター資格試験の試験官でもある事と杉山先輩の推薦もあり読んでみた。



著者は「・・・いま必要なことは、新たな社会と持続可能な森林の管理に向けて、一般の人達から専門家に至るまでが共有できる知識と考え方を分りやすく提示していくことである。本書の目的はそこにある。」としているが、この森林・林業の分野はかなり入れ込んでいる人間でなければ用語を知らないし、また一般人の側はこの分野に取り組むことはこれまでの社会はそう必要無かったのでなおさら用語は解らない。しかしこの分野の本であれば用語が多いのは必至である。一般人にとっては読みきるのにある程度の時間を要すると思われる。



内容はさすがは世界のあらゆる森林を見て肌で感じてきた藤森氏。世界の気象・地形・地質等条件を日本と比較した上で、日本の温暖多雨で植物の生育に適し種の多様性が高く雑草の繁茂が激しい植生、そして四季の寒暖降雨変化の激しさは、林業に有利な条件では無いと指摘。内容の一部を紹介すると、



「・・・昭和30年代以降に、外材の輸入に踏み切って以降の林業政策に欠けていた点は、日本の森林の特性及びその生産環境と、日本のスギ、ヒノキなどの材を圧迫する外材の生産地帯の森林とその生産環境を十分に比較検討することなく、ただ生産技術の向上(低コスト化を含む)、流通システムの改善などで競争力を高めることばかりを主張し続け、競争力の限界を明らかにするという視点からの検討をしてこなかったことである。座標軸のない状態で、ただ頑張ろうというのでは・・・」



などの記述がある。森林インストラクターや森林環境教育者を目指す者必読の一冊。しかしなぜ表紙にチーターの絵が・・・。藤森氏の趣味なのか?