庭木の手入れの勘どころ ― 樹医が教える


庭木の手入れの勘どころ―樹医が教える


  • 山本光二(著)
  • 価格:¥1,575(税込)
  • 出版社:講談社(1996/04)
  • 発売日:1996/04
  • 単行本:255ページ
  • 商品の寸法:18.6x12.8x1.6cm



山本光二樹医(師匠)の本。前回の樹医養成セミナーで樹医についての心構えが全くできていなかったことを恥じ、お師匠の本を何か読もうと思った。すでに【樹医をめざすあなたへ―樹木診断ハンドブック (Gakken ECO‐BOOKS地球市民として暮らす)】は紹介している通り読んでいるが、もう少し近づくための何かが必要だと思った。そのために本書を読んだ。



どんな本かわからずに購入し読み始めたのだが、すぐに「しまった!」と思った。この本は100種の庭木を花木、庭木、実もの、蔓性植物の四つに分け紹介したもの。100種のうち、私の生活圏(亜高山帯)にあるのは数えるほどしかない。うっうっ…。しかも一般家庭の庭木と原生林の立木とでは感覚がまるで違う。“仕立てる”“害虫駆除”というものは原生林では全く無用。っつーか国立公園特別地域でそんなことしたら捕まるだろ!所詮、私の生活スタイルで樹医を名乗ることは永遠にできない運命なのだろうか…トホホ。



なーんつって。もうだいたい理屈&回答は見えてきた。要するにこういうことだ。



樹医の世界では、一本の樹に対し執拗にこだわって生かそうとする。それは、まず一つは、「樹を失った大地はもう大地ではない」から。そしてもう一つの理由は複雑だ。それを書く前に、「樹は自分が枯れることに対してどう思っているか」についての私の考えを示す。



私は、樹は、自分が枯れて朽ち果てることに対して、そうこだわってはいないと思う。特に長年生きた巨木であればこそ、そう思っていると思う。なぜなら種の保存の方を優先したいからだ。長年生きて数万、数千万の種を散布してきた老木は、いつまでもそこで永らえていては自分の出すフィトンチッドで子供たちの成長を抑え続けてしまうことになるし、自分がつくる日影のせいで種が光を受けて発芽することもできない。樹木も人間も考えることは同じ。子供が伸び伸びと成長できるようであれば、いつだって死んでも構わないのだ。だから森林は樹木は、恐ろしいほどの殺菌力を有しながら、カビやきのこなどの木材腐朽菌を身の回りで生かせておいているのである。もし自分の体力が衰えたならば、直ちにこの身を分解させて子供たちに養分として与えてやりたいのである。



では、1300本以上の樹木を治療してきた、樹の声が聞こえる日本樹木保護協会は、なぜ樹木を助けているのか。それは、その樹木を取り巻く風景が、すでに種を、子孫を更新できる状況に程遠いからだ。周りに子供たちの幼樹が十分に育っていれば、親は役目を終えて安心して土に還ることができるはず。しかし都市化と人口過密、コンクリートで地上も上空も囲まれた都会の中でどうやって子供たちが生きていけるだろうか?今の状態のまま朽ち果ててしまっては、無念も甚だしい。その無念の声が聞こえるから、樹木を助けているのだ。



周りに幼樹が健やかに育っている環境になるまで、老樹は頑張ってもらわなくてはならない。通り行く人々にそのシンボリックな樹形を見せつけ、人々の心に深く自然への回帰の心を呼び覚ませる役目があるのだ。そうやってあと100年、いや1000年頑張ってくれれば、この私たちの住まいである地球の環境は、もっとマシなものに変わっていることだろう。だから、樹を助け続ける人はどうしても必要なのだ。