森と人間の文化史
- 著者 只木良也
- 発行 日本放送出版協会 (1988/10)
- 単行本211P
- サイズ19x13cm
- ¥914
イメージしていた“文化史”とは違った内容だった。前回紹介した「森林はなぜ必要か」をもっと詳しく、大人向けにした本だといえる。
前半は森林生態系の基礎、日本人と森林の関係の歴史、森林の機能・水保全といった基本的なことをおさらいできる。後半は緑の効用、森林浴、都市と森林を結ぶ、国土環境保全論…と、これからの森林の活用と付き合い方のあるべき姿に迫っていく。とてもいい構成だと思う。
著者の考え方が非常にポジティブで良い。例えば
◎人工林を作ったから天然林が残った。
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- 人工林を増やして、そこから恒常的に木材が収穫できたおかげで原生的森林を含めた今の天然林も残りえた。
- 人工林を増やして、そこから恒常的に木材が収穫できたおかげで原生的森林を含めた今の天然林も残りえた。
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◎輸入材のおかげで木の文化がつなぎとめられた。
最後に「あとがき」より
「文明の前には森林があり、文明の後には砂漠が残る」という言葉があります。これを木材資源欠乏の意味のみに捉える人はもはやいないでしょう。なるほど文明は人間が創りますが、それを支えるのは人間だけではありません。そこには緑豊かな自然の持つ仕組みと働きが底辺として存在しなければならないのです。それを無視し、おろそかにするとき、文明は土台を失って崩壊して行きます。石油社会は人と森とを疎遠にしました。そして森の産物である木材の用途のかなりの部分は、鉄やコンクリートやプラスチックに置き換わりました。だが、鉄やコンクリートやプラスチックは文明を支える環境までは守ってくれません。それらは、文明を遺跡として残すのには役立つでしょうが…。」