ビオトープ再生技術入門 ― ビオトープ管理士へのいざない


ビオトープ再生技術入門―ビオトープ管理士へのいざない


2006年ビオトープ管理士試験の教読本。いろいろと読む前にまずはこれをきちんと読むべきである。



数年前の日本自然保護協会の自然観察指導員養成講習会で、金田理事が「ビオトープは危険」とはっきり仰った。この本を読んでその意味が解かったような気がする。「間違っている」ではなく「危険」とした金田理事の気持ちがよく解かる。



全国各地の自然再生工事の実例がたくさん載っていてとても参考になるのだが、私も「どうしてこんな無駄な施工をするのだ!?」と、読んでいて気持ちが悪くなってしまった箇所が結構あった。しかし、数百年以上の時間を必要とする安定した極相林を人間が造ろうというのは高慢甚だしい。そして社会的に求められている、要するに再生事業として行われている環境構造の大半は植生遷移の途中相なのである。遷移があって当たり前、陽樹が衰退して陰樹の森になって何が悪い…は通用しないのである。自然が本当に再生して、鬱蒼とした森になっては困るんだと。



現代の教養と欲求をそこそこ満足させる計画・施工・管理が行われる。地球にとっては満足などとてもできるものではないが、それでも自然再生工事は数少ない自然と人間を繋げる手段の一つなのである。



とは言っても万座水害の際に私は、やはり早急な治山復旧工事を心から願った。自然本来のダイナリズムに合わせるのなら人間の方が移動するしかないのだが、職を失ってもいいとは思わなかったのである。そんな私が、人間が満足するためだけの自然再生工事や、遷移に抵抗する湿原維持保全のためのササ刈りや、浅間山に本来ないはずのコマクサ植栽に対して何が言えるだろうか。でもこれからできることはきっとあるはずだ。だから私はビオトープ管理士にこだわっている。



…また、水辺の工事が大半を占めていることが解かる。水が豊富で水が好きな日本人だからなのか、それとも太古からヒトは水辺で進化してきた…という生命の記憶に帰依するものなのか、海外の工事のデータと比較したいと思った。



誤字脱字、樹木等の高木・亜高木分類の間違いは焦って出版したためのものだろう。折角のいい本なのにちょっともったいない。