環境問題とは何か


環境問題とは何か

  • 著者 富山和子
  • 発行 PHP研究所(2001/10)
  • ¥693


著者は、「水と緑と土は同義語」「水田はダム」との理論を提起したことでも知られ、日本における環境問題の草分け的存在。その総合的な研究は富山学とも呼ばれる。



「文明人はその足跡に砂漠を残した。」古代文明は肥沃だった土壌を食いつくし、その枯渇と共に消滅か新天地を求めて移動した。しかし、日本は違っていた。日本は木を伐っては植え、植えついで緑を絶やさなかった。これは世界の奇跡である。西洋が森林を破壊する事で文化を育ててきたのに対し、日本は木を植えることで文化を育ててきた国だった。足元の土地をつぶさずに一万年もの間文化を養い続けてきた文明国は日本だけだとし、水や土壌という究極の資源を作る林業を積極的に評価。しかも先祖は、海から得た魚をも引き上げて陸地に戻しているという。そして土壌の法則をこう説く。「四億年にわたるこの土壌形成の歴史を通して、一つの法則が存在した。いかなる動植物も土壌の形成に参加し、浸食防止に力を貸した。もしもこれを拒む生物があればその生物の方が滅亡した」と。



また、水は土壌の産物。土壌の担い手がいなくなるという事は民族存亡に関わる問題で最大の環境破壊と指摘し、米の市場開放を決定させた細川元首相に対しては「首相の名を歴史は決して忘れないであろう」と批判したり、また水不足に悩む元福岡市長が「今年は田植えをやめてほしい。その水をもらいたい、金を出すから」などと申し入れた件では「気でも狂ったのかと思った」とコメントしたりで、これらの痛烈な批判が実に愉快。



読んで好きになった言葉もある。「土壌の生産力を失った文明は滅びる」「川の氾濫が山の土を客土してくれた」「いったい国土がボランティアで守れますか」など。