『すげむしろ織り』体験学習会を開催



ものづくり伝道師 浅間・吾妻塾『すげむしろ織り』を実施しました。
http://ecotourism.or.jp/monodukuridendoushi/sugemushiro.html


当日のレポートをいたします。



  


今日のお師匠は中村とらさん。筵織り機のことを、筵機(むしろばた)といいます。まずは、経糸を張るための、筬木(おさぎ)をセットします。※この筬木のことを六合根広では「ひ(し)」と呼びますが、織り機の梭(ひ)という道具と混乱するので、このレポートでは筬木で統一します。


この筵機はクリの木で作られていますが、他にはヤマナシ、ズミナシ、ナラの木で作られているそうです。





筵機は、神社の鳥居を逆さまにしたような形をしています。測り仕損じた場所もありますが、このような作りになっています。
機(はた)あしにはいくつも四角い穴■が空いています。■の位置は、どんなサイズの筵を織るか、によって異なります。

  • ね こ … むしろの下に敷く。
  • えなはき … 粟、稗、豆などの収穫物を干すのに使う。
  • かます … 馬が使う。
  • ひぐつ … 馬の餌入れ。

そうですが、「かます(叺)」=藁むしろを二つ折りにして作った袋。主に穀物・塩・石炭などを入れるのに用いる。とネット検索で出てきましたが、六合コトバなのでしょうか?比較的、穴の位置が上になるほど、目が粗くなるそうです。



  


空中に吊るような状態になる筬木も、織るむしろによって大きさが異なります。なお、同じ長さの「かし押さえ棒」が必ず必要です。



  


今日作る玄関マットの幅を織るのに必要な経糸は22本です。経糸を一本一本張っていきます。今現在はホームセンターの麻糸を使っていますが、昔は六合村でも麻を栽培していたそうで、経糸は、六合産の麻糸もしくはシナ糸を使っていたのだそうです。



  


むしろ織りは、必ず二人で織ります。まず、裏側の人が麻糸の先を、上横木の上から表側の人に渡します。
表側の人はその糸を筬木に通します。



  


小さい菱形の穴に上から入れて、長方形の穴へ下から通します。



  


それを裏側の人に上から渡して、下からもらいます。



  


もらった先端を、筬木に通した糸に引っ掛けて、麻糸の根元の方を下からもらいます。



  


ここで、片花結び(本結びの片側だけを引き解けの状態にした結び目)にして結びます。



  


余った麻糸をハサミで切って、下から麻糸を裏側の人に渡し、裏側の人はまた上から表側の人に先を渡します。この繰り返しです。



  


一番端は、頑丈にするために麻糸を二重にします。



  


経糸に「かし押さえ棒」を通します。表側から見ると、右の糸が棒の手前に来るようにします。



  


通し終わったら、棒をしっかりと下げて押さえてから、結び目を指で引っ掛けて棒まで下げおろします。



  

  


下ろした棒と経糸の、両端と真ん中の三箇所を、短い紐で縛ります。



  

  


筬木の固定紐の結びを解き、フリーになった筬木を上横木にあてて、経糸の幅を等間隔に並べます。



  


経糸の張りを強めます。今でもテンションがかかっている状態なので、下横木の上に足をかけ体重を乗せつつ、下横木の上に挿さっている止め木を抜いて、下に挿さっているくさびを、横木の上に挿し替えます。しっかりと経糸を張りましょう。



  


この後、この「さんご」という道具を使ってむしろ織りを行います。先端が「かぎ」のようになっています。スゲは、前日に湿らせてあります。



  


スゲを4本取り出し、2本ずつ「もと」(根元)と「うら」(先)にしてまとめ、約5cm幅の青色の布でくるみます。



    


包んだら両側からねじります。しっかりと捻ったらこすって、形を整えます。



  


筬木の取っ手を上にあげ(傾かせ)ると、筬木のすぐ下の経糸が前後に動き、隙間ができます。その隙間に、「さんご」を「かぎ」を上にして通します。


  
  


通した「さんご」の「かぎ」に、捻った布スゲの先端を引っかけて引き戻します。



  

  


捻り布スゲをしたの方まで下げてから、筬木で上から叩いてきめます。



  


向かって右側の「捻り布スゲ」の余り部分を外側から二重経糸に回り込ませ、2本の間から挟めて止めます。この作業を「耳をかく」といいます。



  


もう一本、ピンク色の「捻り布スゲ」を作り、今度は筬木の取っ手を下にさげて傾かせ、経糸を先ほどと逆に前後に開かせ、「さんご」を通します。



  


さんごを使って「捻り布スゲ」を引き通し、筬木を上から叩きます。この2本の「捻り布スゲ」がすげむしろの端になりますから、何度か叩いて形を整えます。向かって左側の「捻り布スゲ」の「耳をかき」ます。



  


ここからはしばらくの間、スゲだけを通して編んでいきます。一回で約3本づつ、5回通しで1セットです。最初は右側が「もと」になるようにします。筬木の取っ手は「上げる」「下げる」を必ず交互に行います。交互にすることで緯糸に相当するスゲが互い違いに編まれていきます。



  


筬木を叩いた後、1回目、3回目、5回目の「もと」だけ耳をかきます。



  

  



5回通し終えたら、今度はスゲの「もと」と「うら」を逆に通します。筬木を叩く人は同じ場所で作業するために、「さんご」とスゲを通す人が工夫をして逆にします。スゲの「もと」を二つ折りして「さんご」にかけて、送り通します。



  


スゲをまっすぐ下に叩き織れるように、さんご係の人がスゲを引っ張ってあげると良いです。



  


5回通し一セットで、次々に織っていきます。次第に高くなってきます。





交代でとら師匠の指導を受けます。



    


次々に織っていきます。



  


経糸を均等幅に、そしてしっかりと張っていないと、筬木をまっすぐに叩き落とせません。師匠は叩く作業が重労働だと仰っていました。また、編み間違えてしまった時に、丈夫なスゲならば引き抜くこともできます。藁だと途中で切れてしまうことでしょう。



  


「さんご」に引っ掛けたスゲを横に引くと、自動的に経糸が次々とスゲもとを押さえる役目をして途中で外れません。そして経糸がない端までくると、自然と外れます。とても優れた道具、昔の人の知恵に驚かされます。



  


気になったことを。向かって左側、とら師匠側の方は、1.3.5回目ではなく、2.4回目に「耳かき」をしているようです。これが一回目。



  


二回目、三回目。



  


四回目、五回目。やはり、「耳かき」の回数は右側は5回中3回、左側は2回です。





こうすると、必然的に右側の方がやや厚くなってしまいます。平行にするためには右側を強く叩かなくてはなりません。そういったアンバランスさが、微妙な歪みを生じさせ、味のある拠れを生じさせているのかもしれません。



    


次々に織っていきます。





もうこんなに高くなりました。このあたりで仕上げます。



    


むしろの縁となる部分を織ります。先に(内側)ピンク色、次に(外側)青色です。布で包む前に軽く拠っておくとスゲがバラけませんでした。



  


一番最初に織った時と同じルールで、交互に「耳かき」します。



  

  


筬木を紐で「はたあし」に仮止めし、横に飛び出ている余分なスゲを切り取ります。ピンと張っている今は切るチャンスです。スゲを一掴みずつ掴んで、出刃包丁で少しずつ切ります。左側は切りやすいのですが、右側は右手がスゲを掴むために、左手で包丁を使わなくてはなりません。
※後で、上から木材などを押し当てて切りそろえるそうです。



  

  


張った経糸を切りつつ、対になった2本を結んでいきます。最も単純な結び方で。



  

  


次に下の横木からむしろを外します。固定している紐があったら外して、最初に「かし押さえ棒」と経糸を結んだ3箇所(両端と真ん中)の紐を解き抜いて、棒は外します。



  


下側の他の紐も、全て解け抜くことができます。これで下側は完成です。



  

  


上側の余った紐をまとめるテクニック。端の方の余った紐を縄ないしやすい長さにカットし、まずは端の4本を片手に2本ずつ持って縄ないします。縄ないしたら、次の2本の紐で結び、



  


その結んだ紐ごと、次は6本になった紐を片手に3本ずつ持って縄ないします。



  


次の2本の紐で結びます。最初になった4本と次の6本で太さが違うことに注目。



  


ここで、一番最初の4本のうち、2本をカットします。その次で残りの2本をカット。後は順番に早く縄ないされた紐からカットしていきます。



  


端まで来ても、要領は同じです。最後の4本を2本・2本で結んで、



  


これまで縄ないしてきた、最も古い紐をカットし、6本を3本・3本で縄ないします。



  


最後は玉結びをして、余分な分をカットします。





こんな風に仕上げてください。縄ないだけで、こんなにお洒落にできるんですね!



  

  


はみ出ているスゲを切り取って、「すげむしろ」の完成です。もこもこした膨らみの大きさは、スゲを何本入れるかで変わります。



  


筵機は、くさびを下横木の上から下に戻し、止め木を差し戻しておきます。

《この他に、作業中に聞かせてくれたこと》


むしろ織りに使うスゲは、長めのものを揃えて刈り取ってくること。スゲの長さが短いものがあると、むしろの真ん中が膨らんでしまう。
スゲを刈る時は、丁寧に、傷つけないようにすること。そうしないと途中で切れてしまう。
スゲを湿らす時、水分が少ないと切れてしまうが、多すぎると筬木に張り付いてきてうまくいかない。
昔は集落中の女が集まってむしろを織った。男は野反湖の下まで行って、泊まり込みで炭焼きをしていた。
炭焼き窯は女房も一緒に作るので場所を知っている。旦那はたまには帰ってきて進捗状況を女房に教えた。
根広では稲はなかったので、カヤで炭俵を作った。


すげむしろには、昔の知恵が本当にいっぱい詰まっていました。何でも自動でどうにかできてしまう現代とは違って、とても工夫がされていましたし、気が利いていました。


人類の知性は2000〜6000年前をピークにして少しづつ低下しているという説があります。狩猟採取生活は一瞬の判断ミスで命取りになるため、知性、感情に安定性があるほど生存繁栄できましたが、農耕生活によりそれらは生死に直接関係しなくなり、特に知性は低下の過程にあるという説です。だとしたら、産業革命以降の200年間でずば抜けて低下しているかもしれません。恐ろしいことです…









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